仕様
敷地を有効活用できる共同住宅と二世帯住宅の組合せ
杉並区に建つ地下1階・地上2階建ての賃貸併用二世帯住宅です。敷地の活用方法として、オーナー住居付きの賃貸住宅は、有効な手段の一つです。建物のプログラムは、地下1階に賃貸住宅3戸、1階に賃貸住宅2戸とオーナー住居(親世帯)、2階にオーナー住居(子世帯)となっています。
- 敷地は第1種低層住居専用地域内の土地で建物のボリューム確保が厳しい中、建ぺい率の緩和や地下利用による容積率の緩和、勾配天井を設けるなどして最大限の住居ボリュームを確保した計画です。
- 前面道路からの各住戸へのアクセスを、オーナー住居となる二世帯住宅部分は敷地南側から、賃貸住宅部分は敷地北側からとアプローチを別々に設けることで、オーナーや入居者のプライバシー等に配慮した計画となっています。
木造の共同住宅を準耐火建築物で実現するメリット
この賃貸併用二世帯住宅は、建築基準法の定める「イ準耐火建築物(45分準耐火)」の仕様で実現しています。準耐火建築物として計画することで「準防火地域における準耐火構造の緩和」を使うことができ、建ぺい率を10%増やすことが可能になります。都市部の限られた敷地においては、有効な設計手法です。
- 木造の共同住宅は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比較して建設コストを抑えることができるメリットがあります。木造は他の工法と比較して構造躯体費が安く、建物の重量が軽いことから基礎工事や地盤改良費も抑えられます。
- 建築基準法の改正により、防火地域や準防火地域においても準耐火建築物の可能性が広がり、木造での計画が実現しやすくなっています。デザインと性能、コストのバランスを考えると木造は有利です。
美しいデザインで木造賃貸住宅の付加価値を上げ、空室率を下げる
都市部においては画一的な賃貸住宅では、他の賃貸住宅と差別化できない可能性もあります。そこで外観、内観ともに美しい建築デザインを追求することで、他の賃貸住宅との差別化につながり、付加価値の高い賃貸住宅を実現することができます。賃貸住宅における最も考慮すべき将来の入居率の不安を軽減するのが、建築家の設計による「デザイナーズマンション」です。
- 美しい外観デザインは、建物への愛着が生まれやすく、街の景観にも良い影響を与えます。賃貸住宅の入居者の満足度にもつながります。
- 外観には、有孔折板(折り曲げて強度を持たせた有孔鋼板に亜鉛メッキを施したもの)を採用しています。建物の外観デザインにシャープな印象を与えると共に、前面道路からの住戸のプライバシーを確保するための目隠しとしての役割を果たしています。
二世帯住宅と賃貸住宅を快適に両立しつつ家の魅力を高める
賃貸併用二世帯住宅の計画では、建物の平面・断面ともにゾーニング(エリア分け)が重要です。賃貸住戸とオーナー住戸の快適性を高めるためには、特に音の対策が必要です。地下室があることのメリットの一つは、1階部分の床がコンクリートとなるため、地下室側の賃貸住宅の遮音性が大きく向上します。木造となる2階部分の床には遮音ゴムマット等を採用し、1階天井下地には防振吊り木を用いるなど下階の遮音性の向上に配慮した設計となっています。
- オーナー住戸(親世帯)は1階にあることから、外部にLDKとつながるテラスを設けて、庭も楽しめる注文住宅としての住まいの魅力を高めています。L字型の間取りにより、採光や通風も確保でき、快適な住環境となっています。
- オーナー住戸(子世帯)は2階にあることから、屋根形状を活かした勾配天井の仕上げに木を貼り、間接照明を設けるなど、内部空間に奥行きを持たせると共に部屋の雰囲気を高めています。
地下RC造と木造の混構造を耐震構法SE構法で実現
この賃貸併用二世帯住宅は、1・2階の木造部分に耐震構法SE構法を採用して、木造では最高レベルの耐震等級3相当の構造性能を実現しています。自然災害の多い日本において、注文住宅や共同住宅の計画では、耐震性や省エネルギー性などの基本性能を高めた建築物を建てることが基本です。
- 耐震構法SE構法は、独自のSE金物を使用した断面欠損の少ない構造によって柱と梁とを接合し、優れた耐震性能を実現しています。耐震構法SE構法は表面にネジ切り加工を施した通常のボルトの約2倍の強さを持つSボルトを木材にねじ込み、高強度のSE金物との組み合わせにより、耐震性の高いラーメン構造を実現しています。
- 住居系地域等の厳しい敷地条件でも可能な限り住宅を広く建てたいという場合には、容積率の緩和要件を使って延べ床面積を増やすことで、広い住宅を実現することが可能です。地下室がある場合、住宅として使用する部分の床面積の3分の1を限度として容積率の計算から除外することができます。