建て替えの費用と進め方|リノベーションとの比較ポイント
公開日:2026-10-27

今の土地に住み続けたい一方で、家を建て替えるか、骨組みを生かしてリノベーションするか。費用を調べても金額の幅が大きく、自宅に当てはまる目安はなかなか見えてきません。
結論からいうと、建物価格や坪単価を比べる前に、既存建物の状態、接道や擁壁などの敷地条件、希望する間取り・性能を確かめておくと、判断がぶれにくくなります。リノベーションで残せる部分が少なければ工事範囲は広がり、反対に、現行法規のもとで建て替えると建物の規模や形が変わる土地もあります。
この記事では、建て替えにかかる費用の内訳、解体から入居までの進め方、リノベーションとの比較方法を整理します。横浜・湘南・東京の狭小地や高低差のある土地でも、何から調べればよいか分かるように解説します。
目次
建て替え費用は「建物本体」だけで考えない
建て替えの総額は、新しい建物の工事費だけでは決まりません。まず、次の4つに分けて整理します。
| 費用の区分 | 主な内容 | 見積もりで確認すること |
|---|---|---|
| 既存建物をなくす費用 | 解体、残置物処分、アスベスト事前調査、地中埋設物への対応 | 既存図面と現地調査の範囲、追加費用になる条件 |
| 新しい建物をつくる費用 | 本体工事、設備、設計、確認申請、地盤改良 | 仕様、数量、別途工事、見積有効期限 |
| 敷地を整える費用 | 擁壁、造成、給排水・電気・ガスの引き込み、外構、搬入・仮設 | 既存設備を再利用できるか、道路条件で施工方法が変わるか |
| 工事中の生活と手続きの費用 | 仮住まい、2回の引っ越し、家財保管、登記、融資、税・保険 | 工期が延びた場合の予備費、契約更新や保管期間 |
既存建物の解体では、建材の種類、重機が入れるか、隣地との距離、地下室や擁壁の有無で条件が変わります。解体後に地中埋設物が見つかったり、地盤調査後に改良が必要になったりする可能性もあります。最初から予備費を持ち、どの条件で追加費用になるかを見積書に書いてもらいます。
解体・改修工事の前には、石綿を含む建材があるかどうかの事前調査が必要です。床面積80㎡以上の解体工事や、請負金額100万円以上の改修工事では、石綿の有無にかかわらず事前調査の結果を報告する必要があります。解体見積もりに、調査・届出・除去のどこまでが含まれるかも見ておきます。
出典国土交通省|マンション改修マニュアル(令和8年3月改訂)(2026年10月26日確認)
国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査では、注文住宅の建て替え世帯における住宅建築資金は全国平均5,214万円、中央値3,900万円でした。調査世帯の平均・中央値であり、個別の工事費を示す相場ではありません。延床面積、構造、設備、敷地条件が異なるため、この数字から自宅の予算を逆算せず、計画ごとの内訳で判断します。
出典国土交通省|令和6年度 住宅市場動向調査報告書(2026年10月26日確認)
ジェイホームズでは、坪単価だけでなく、総額と内訳をそろえて考えることを重視しています。高級注文住宅のコストの考え方も参考に、建て替えでは解体・造成・仮住まいまで含む同じ範囲で比較してください。
建て替えとリノベーションの違いを比較する
建て替えは既存建物を解体し、新しい建物をつくる方法です。リノベーションは基礎や柱、梁など、既存建物の使える部分を残しながら改修します。どちらが安いかは工事前には決められません。
ジェイホームズのリノベーションは、構造躯体を残して外装・内装・設備をすべてやり替える全面リフォームに限っています。そのため、比べるのは「建て替え」と「躯体を残した全面リノベーション」の2案です。
| 比較項目 | 建て替え | 大規模リノベーション |
|---|---|---|
| 構造 | 新しい構造計画を立てる | 既存の基礎・柱・梁の状態と配置に影響される |
| 間取り・性能 | 敷地と法規の範囲で計画し直しやすい | 残す構造や床高、開口位置による制約がある |
| 費用の読み方 | 解体費と新築費、付帯工事を合計 | 解体して初めて分かる劣化・補強の予備費が重要 |
| 法規 | 現行法規で新築できる規模・形を確認 | 工事内容によって確認申請や現行基準への適合を検討 |
| 工事中の住まい | 原則として仮住まいが必要 | 工事範囲によって仮住まいが必要 |
| 引き継げるもの | 土地、庭木、外構の一部など | 法規と工事範囲の確認を前提に、躯体や思い出のある部材を生かせる場合がある |
リノベーションが向く可能性があるのは、調査で基礎や構造体の状態が確認でき、希望する間取りと性能を無理なく実現できる場合です。既存の佇まいや部材を残したい、建て替えによって現在と同じ規模を確保できない、といった事情も判断材料になります。
一方、構造体の劣化や耐震補強の範囲が大きい場合、天井高・段差・柱位置を大きく変えたい場合、断熱・設備を建物全体で計画し直したい場合は、建て替えも有力です。費用差だけでなく、完成後にどれだけ希望を満たせるか、将来の点検や改修をしやすいかまで比べます。
なお、2025年4月以降、2階建て木造戸建てなどで主要構造部の一種以上について過半を改修する大規模なリフォームは、建築確認手続きの対象です。水回り設備のみの交換などは同じ扱いではありませんが、確認申請が不要でも建築基準法への適合は必要です。計画初期に建築士へ工事範囲を伝え、必要な調査・設計・申請を工程へ組み込みましょう。
出典国土交通省|木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について(2026年10月26日確認)
リノベーションの実例や考え方は、ジェイホームズの高級リフォームでもご覧いただけます。
建て替えを決める前に確認したい敷地と建物の条件
1. 現在の家は、現行法規で同じように建て替えられるか
古い家が建つ土地でも、同じ規模・位置で新築できるとは限りません。接している道が建築基準法上の道路か、接道条件を満たすか、セットバックが必要か、用途地域や高さ・斜線・防火の規制で建物の形が変わるかを調べます。
横浜市では、敷地が建築基準法上の道路に接していない場合など、法第43条第2項の認定・許可に関する個別相談窓口を設けています。許可を受ければ必ず希望どおり建つという意味ではありません。土地の公図、測量図、道路資料、既存建物の確認済証・検査済証を集め、行政や建築士に相談します。
出典横浜市|敷地等と道路との関係の許可・認定(建築基準法第43条第2項)(2026年10月26日確認)
2. 擁壁・高低差・地下室をどう扱うか
高低差のある土地では、建物だけでなく擁壁の図面、築造時期、確認・検査記録、ひび割れや排水の状態を見ます。既存擁壁をそのまま利用できるか、補強・やり替えが必要かによって、計画と費用は大きく変わります。
ジェイホームズの施工事例では、傾斜地で地階を鉄筋コンクリート造とし、擁壁と建物を一体にして地盤を安定させた住宅があります(海と空に開く邸宅)。
既存の地下室やRC造の車庫がある場合も、単純に残せる、または壊せるとは決められません。新しい建物の荷重、構造の取り合い、防水・排水、解体方法、近隣への影響まで含めて調査します。図面が残っていれば、相談の際にお持ちください。
3. リノベーションで残せる構造と、希望が両立するか
リノベーションを検討する場合は、耐震診断だけでなく、基礎、柱・梁、雨漏り、腐朽・蟻害、断熱、給排水・電気設備まで調べます。調査で見えない部分は、解体後に追加工事となる条件を見積書へ明記してもらいます。
希望する間取りも同時に重ねます。大きな吹き抜け、地下室、ビルトインガレージ、大開口、上下階の水回り移動などは、残す構造との調整が必要です。残せるから残すのではなく、残すことで得られる価値と制約を比べて決めます。
建て替えの進め方を7段階で整理する
1. 希望と総予算を整理する
家族が困っていること、残したい庭や家具、必要な部屋、性能、入居希望時期を書き出します。予算の基準は、新築本体だけでなく、解体、仮住まい、引っ越し、外構、登記、融資、予備費を含めた総額です。
2. 既存資料と敷地資料を集める
確認済証・検査済証、設計図、構造図、増改築の履歴、測量図、地盤調査、擁壁・地下室の図面を探します。資料がない場合も、その事実を設計者へ伝え、どの調査が必要かを決めます。
3. 現況・法規・構造を調べ、二つの案を比べる
建て替え案とリノベーション案を、同じ要望と予算範囲で比較します。比較表に並べるのは、工事範囲、実現できる間取り・性能、申請、工期、仮住まい期間、追加費用の条件、完成後の維持管理です。
4. 基本計画と概算見積もりをつくる
建て替えを選ぶ場合は、新しい建物の規模・構造・配置と、解体・造成・外構を一体で検討します。概算見積もりでは「一式」だけでなく、含まれる仕様・数量・別途工事の内訳を出してもらいます。
建築費や制度の直近動向を把握したい方は、2026年の注文住宅動向も参考にしてください。
概算見積もりの考え方は、高精度の概算見積りが高級注文住宅の設計を成功に導く鍵にまとめています。
5. 仮住まいと解体準備を進める
工事工程が見えた段階で、仮住まいの希望地域、家賃、広さ、ペット、駐車場、通学・通勤、家財保管を整理します。短期間の賃貸は条件に合う物件が限られ、解体の直前では間に合わないこともあります。郵便、電気・ガス・水道、インターネット、保険などの移転・停止手続きも、一覧にしておくと漏れがありません。
6. 解体後に敷地を確認し、新築工事へ進む
解体後に見るのは、地中埋設物、地盤、既存配管、境界付近の状態です。調査結果によって地盤改良や配管計画が変わる場合は、金額と工程への影響を確かめてから進めます。近隣には、解体と新築で工事期間が長くなること、車両や騒音が発生する時期を工程に沿って案内します。
7. 竣工・引っ越し・登記を行う
完了検査、施主検査、取扱説明を経て、引き渡しです。新居への引っ越し、登記、住民票や各種契約の変更を進め、点検時期と設備保証も保管します。
迷ったときは「建物診断」と「敷地調査」から始める
建て替えとリノベーションは、完成後の見た目だけを比べても判断できません。まず、既存建物と敷地の事実を集め、それぞれで実現できる案と総額を並べます。
相談時には、次の資料があると検討が進みやすくなります。
- 既存建物の平面図・立面図・構造図
- 確認済証・検査済証、増改築の記録
- 土地の測量図、公図、登記事項証明書
- 擁壁・地下室・地盤調査の資料
- 現在困っていることと、残したいものの写真
- 希望の間取り・性能・入居時期・総予算
ジェイホームズは、計画段階の概算見積もりと、設計内容・予算のすり合わせを重視しています。図面がある方は図面を、ない方は分かる範囲の資料と希望をお持ちください。ご相談・資料請求から、建て替えとリノベーションの比較を含めてご相談いただけます。
建て替えとリノベーションのよくある質問
フルリノベーションと建て替えは、どちらが安いですか?
工事前に一律には決められません。リノベーションは解体範囲を抑えられる一方、劣化した構造の補強や断熱・設備の全面更新が必要になると費用差が小さくなります。建て替えは解体費がかかりますが、間取り・構造・性能を一体で計画できます。現況調査後に、同じ要望と工事範囲で総額を比較してください。
建て替え費用には、解体費や仮住まい費も含まれますか?
見積もりの表示範囲によって異なります。新築本体とは別に、解体、残置物処分、地盤改良、給排水、外構、仮住まい、2回の引っ越し、家財保管、登記・融資費用が必要になることがあります。比較するときは、含まれる項目をそろえてください。
建て替え中の仮住まいは、いつから探せばよいですか?
建て替え方針とおおよその工事工程が見えたら探し始めます。短期契約、ペット、駐車場、学区、家財保管などの条件が多いほど候補は限られます。解体日だけでなく、工期が延びた場合の契約更新の条件も見ておくと安心です。
築年数だけで建て替えを決めてもよいですか?
築年数だけでは決められません。同じ年数でも、構造、地盤、雨漏り、維持管理、増改築履歴によって状態は異なります。建物診断と資料確認を行い、希望する間取り・性能を実現するための補強範囲と費用を見て判断します。
今の家と同じ大きさで建て替えられますか?
同じ大きさで建てられるとは限りません。接道、セットバック、建ぺい率・容積率、高さ、防火など、現在の法規で新しい計画を検討します。既存建物が現行規定より前に建てられている場合は、建て替え後の規模や配置が変わる可能性があります。
まとめ:先に調べるほど、建て替えとリノベーションを比べやすい
建て替え費用は、新しい建物の価格だけでなく、解体、地盤・擁壁、給排水、外構、仮住まい、引っ越し、諸手続きまで含む総額で考えます。リノベーションとの比較では、既存構造を残せるかだけでなく、希望する間取り・性能、法規、工期、追加工事の不確実性まで並べて比べます。
まずは既存図面と敷地資料を集め、建築士に建物診断と法規の確認を相談してみてください。その結果をもとに二つの案を同じ条件で比べれば、ご家族に合う選択が見えやすくなります。
この記事の著者・監修者

著者
牧野伸一
ジェイホームズ株式会社 代表取締役/二級建築士
長年の住宅建築の経験をもとに、ご要望や暮らし方を丁寧にくみ取り、建築家・施工管理者・熟練の大工・職人の力を結集した家づくりを行います。デザイン性と耐震・断熱性能を両立させながら、施工品質・工程・コストを一貫して管理し、安心して長く快適に暮らせる住まいの実現を支えます。
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監修者
植村将志
ハウス・ベース株式会社 代表取締役/一級建築士・住宅性能評価員
一級建築士として住宅・建築関連の実務経験を持ち、専門性の高い内容について、読者にわかりやすく伝わるよう執筆・編集・監修を行っています。工務店・ハウスメーカー・建材メーカー・木構造材メーカーなどの業務支援にも携わっています。
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